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2024年05月05日
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大地のモノ
2010年01月23日
奈津古見(一発変換)で配布した大地のモノの序文があったので、投下。
意外と主要なエピソードはできているので、青き華の埋葬の1章の連載が終了したら次にくるのはこれかも。
意外と主要なエピソードはできているので、青き華の埋葬の1章の連載が終了したら次にくるのはこれかも。
大地のモノ
第一章 獣の神と愚かな娘
忘却の民は衰退を繰り返す。
果て無き願いは既に潰え、待つのはただ優しき終焉のみ。
ならば今こそ我が名を讃えよ。
―――既に大地の支配者は汝らに非ず。
0 選択
喉が、渇いていた。
身体は森の寒さとかいた汗に冷えきっていた。
先ほどまで鳴っていた腹はもう感覚がない。
ただ、どうしようもなく焼けるように喉が渇く。
水がほしかった。
一杯の水でいい。
いや、一口でも構わない。
とても自分が滑稽で愚かだと分かっていてもなお。
身体は水を求めていた。
生きるため。
ただ。生きるために。
だから、水を。
この喉を潤す水を。
既に目の前は霞んで、おぼろげにしか全てはみえなかった。
今ここで膝をつけば、たやすく身体はこの大地に倒れ込むだろう。
その後にはきっと、安らかな死が待っている。
けれど、それでも少女は歩いた。
ただ一滴の、自らの生命を潤す水を求めた。
そして彼女は求めるものを見出した―――すなわち生命の水の溢れる泉を。
その瞬間、少女は身体が求めるまま、その泉の水へと口付けた。
久しぶりに口にした水は、甘露のようにその身を潤していく。
一度口にすればもう後は止まらなかった。
獣の如く、少女はその水を飲み込んだ。
極限の中、口にしたその水は変わらず甘く―――甘く。
少女は、いつしか涙が頬に伝っていたことに気づく。
泣き出したいくらいに嬉しかったのか、それとも―――。
ただ生きたいと身体はいう。
心とは裏腹なそれを、少女は心底恨んだ。
ここで死んでいれば、きっと全てを終わらせることができた。
それなのに、最期に選んでしまったのは。
胸中に巡るのは、泣き叫びたいくらいの後悔。
それでも少女は選択してしまった。
選び取ったのは他ならぬ自分。
ならば。
自分は、生きなくてはならない。
少女は、薄れゆく意識の中で願う。
次に目覚めた時、そこが少しでも優しい世界であればいい、と。
―――果たして、その願いは叶ったのか。
「目覚めよ、愚かな娘」
覚醒は唐突だった。
水を得た安心感と、されど満たされぬ空腹故に気を失った娘は、大地の底から響くかのような低い声を聞いた。
ゆっくりと瞳を開き、倒れ込んだその場所から身体を起こそうと、細い腕に力を込めた。
力は相変わらず入りはしなかったが、それでもなんとか顔を声のした方向へと向けた。
そして次の瞬間、霞んで見えなかった眼に、その真実が映りこんだ。
それは息を呑むくらい幻想的で、神秘的な光景。
深い木々の間から射し込む木漏れ日に輝いていたのは、眼前の深い緑を湛えた泉。
泉の奥、浮かび上がるのは翼を持つ獣だった。
白い毛並みが泉に反射した光に煌めき、獣のいる辺りは仄かに青白く光り輝いていた。
頭上には冠のような角が突きだし、まるでその獣が王者のような貫禄を持っているように見えた。
その獣は、美しかった。
ただ、美しいとしか形容できない、娘はそんな想いを抱く。
けれど、娘の想いとは裏腹に、獣は娘へとその言葉を告げた。
「愚かなヒトよ。お前は許されぬ罪を犯したのだ」
その獣が告げたのは、彼女を断罪する言葉だった。
**********************************
第一章は獣神と少女の触れ合いが主かな。
第二章から、ちょっと血生臭くなります。
作者の独断と偏見により、テーマは人外との恋です。
ただ、神話と繰り返される悲劇もその中に入ってくる予定。
思えば、既にうちの創作には人外カップルいるんだよな。
作襟とかも一応人外ですし。
ただ相手がヒトの姿してないのは初めてなので、描くのが難しい。
文字でも絵でも。
・・・誰かデザインしてくれ(まてこら)
第一章 獣の神と愚かな娘
忘却の民は衰退を繰り返す。
果て無き願いは既に潰え、待つのはただ優しき終焉のみ。
ならば今こそ我が名を讃えよ。
―――既に大地の支配者は汝らに非ず。
0 選択
喉が、渇いていた。
身体は森の寒さとかいた汗に冷えきっていた。
先ほどまで鳴っていた腹はもう感覚がない。
ただ、どうしようもなく焼けるように喉が渇く。
水がほしかった。
一杯の水でいい。
いや、一口でも構わない。
とても自分が滑稽で愚かだと分かっていてもなお。
身体は水を求めていた。
生きるため。
ただ。生きるために。
だから、水を。
この喉を潤す水を。
既に目の前は霞んで、おぼろげにしか全てはみえなかった。
今ここで膝をつけば、たやすく身体はこの大地に倒れ込むだろう。
その後にはきっと、安らかな死が待っている。
けれど、それでも少女は歩いた。
ただ一滴の、自らの生命を潤す水を求めた。
そして彼女は求めるものを見出した―――すなわち生命の水の溢れる泉を。
その瞬間、少女は身体が求めるまま、その泉の水へと口付けた。
久しぶりに口にした水は、甘露のようにその身を潤していく。
一度口にすればもう後は止まらなかった。
獣の如く、少女はその水を飲み込んだ。
極限の中、口にしたその水は変わらず甘く―――甘く。
少女は、いつしか涙が頬に伝っていたことに気づく。
泣き出したいくらいに嬉しかったのか、それとも―――。
ただ生きたいと身体はいう。
心とは裏腹なそれを、少女は心底恨んだ。
ここで死んでいれば、きっと全てを終わらせることができた。
それなのに、最期に選んでしまったのは。
胸中に巡るのは、泣き叫びたいくらいの後悔。
それでも少女は選択してしまった。
選び取ったのは他ならぬ自分。
ならば。
自分は、生きなくてはならない。
少女は、薄れゆく意識の中で願う。
次に目覚めた時、そこが少しでも優しい世界であればいい、と。
―――果たして、その願いは叶ったのか。
「目覚めよ、愚かな娘」
覚醒は唐突だった。
水を得た安心感と、されど満たされぬ空腹故に気を失った娘は、大地の底から響くかのような低い声を聞いた。
ゆっくりと瞳を開き、倒れ込んだその場所から身体を起こそうと、細い腕に力を込めた。
力は相変わらず入りはしなかったが、それでもなんとか顔を声のした方向へと向けた。
そして次の瞬間、霞んで見えなかった眼に、その真実が映りこんだ。
それは息を呑むくらい幻想的で、神秘的な光景。
深い木々の間から射し込む木漏れ日に輝いていたのは、眼前の深い緑を湛えた泉。
泉の奥、浮かび上がるのは翼を持つ獣だった。
白い毛並みが泉に反射した光に煌めき、獣のいる辺りは仄かに青白く光り輝いていた。
頭上には冠のような角が突きだし、まるでその獣が王者のような貫禄を持っているように見えた。
その獣は、美しかった。
ただ、美しいとしか形容できない、娘はそんな想いを抱く。
けれど、娘の想いとは裏腹に、獣は娘へとその言葉を告げた。
「愚かなヒトよ。お前は許されぬ罪を犯したのだ」
その獣が告げたのは、彼女を断罪する言葉だった。
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第一章は獣神と少女の触れ合いが主かな。
第二章から、ちょっと血生臭くなります。
作者の独断と偏見により、テーマは人外との恋です。
ただ、神話と繰り返される悲劇もその中に入ってくる予定。
思えば、既にうちの創作には人外カップルいるんだよな。
作襟とかも一応人外ですし。
ただ相手がヒトの姿してないのは初めてなので、描くのが難しい。
文字でも絵でも。
・・・誰かデザインしてくれ(まてこら)
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